被災地のセクシュアル・マイノリティへの支援 (2011年)

被災地のセクシュアル・マイノリティへの支援

3月11日に発生した東日本大震災のために、日本全国と海外の皆様
から被災地へのご支援をいただきましたことに感謝を申し上げます。
当会にも援助の申し出をいただき、多くの支援金が寄せられました。
皆様のご好意により、特に震災の影響が大きかった宮城県内の会員や関係者に、
支援物資やお見舞金をお渡しすることが出来ました。
ライフラインが途絶え、食料の確保が困難になり、食事や入浴がままならない
人達もおりましたが、現在は野菜や肉などの生鮮食品もスーパーから買える
ようになったところが多くなり、日常生活が戻ってきています。
しかし、住居を失った人や引越しを余儀なくされた人、自家用車等の家財に
被害を受けた人、就業先が事業再開できず転職先を探している人、
ローンを抱えているが払う資金がない人など、経済的な支援の必要な人達がいます。
今後とも継続的な東北・関東の太平洋沿岸部の被災者へのご支援と
応援をよろしくお願い申し上げます。

【東北地方のセクシュアル・マイノリティの特色】

・地域内の結束が強く、居住地域の一員としての意識も高い。
・土地への愛着があり、家族との同居が多い。
・セクシュアリティを知られることを怖れる気持が強く、カミングアウトが困難なことがある。

【被災地でのセクシュアル・マイノリティの生活】

・生活は男女のどちらかで行っているために、公共の場では外見のジェンダーで振舞うことに慣れている。
・性的指向は公共の場では特に問題にならないが、異性との恋愛や結婚、子作りの話が増える恐れはある。
・性別違和感があっても、本人が選択したジェンダーで地域社会に溶け込んで日常生活を送っている。

【セクシュアル・マイノリティであるために予測されること】

≪ゲイ・レズビアン・バイセクシュアル・アセクシュアル≫
・被災生活や避難所生活においては、性的指向に伴う問題は二の次となる。食事と睡眠の確保が優先される。
・パートナーとの同居の場合は、家族や親戚、友人などの説明や協力により、周囲との摩擦は回避できる。
・住居の損害によって、隠していたアダルト系の雑誌やグッズ等が発見される怖れはあり。
・損壊した住居からの引越し、怪我をしたパートナーへの付き添い、死亡したパートナーの財産問題は、通常の場合と同様の課題が発生するだけであり、被災によって問題が発生するということではない。
・家族と暮らす被災地のパートナーへの面会は、親しい友人として紹介してもらうことでクリアできる。家族の信頼を得ることが優先であり、恋人であることなどのカミングアウトは家族の様子を見ながら行う方が現実的である。

≪トランスジェンダー/性同一性障害≫
・通院先が被災した場合は、ホルモン療法の継続が危ぶまれるが、転院により治療継続は可能。
・ホルモン剤の製薬工場が被災したため一時は供給不足となったが、製造は再開している。
・避難所におけるホルモン療法の継続は、医療関係者への申し出や近隣の病院への通院により可能と思われる。
・性別適合手術後のケアは、自宅にいる場合はライフラインが復旧すれば継続は困難ではない。
・衛生状態が保たれていれば、造膣したMTFのダイレーション継続も可能。ただし、避難所でのケアは難しいために、膣狭窄の可能性が高くなる。
・避難所においても、トイレは男女どちらかを使用するために問題は発生しない。性別移行中の場合は、誰でもトイレがあれば、なお利便性が良くなる。
・被災地での入浴は個別に入ることが難しいため、親戚や友人・知人宅を頼ることにより解消できる。入浴できなくても、タオルで身体を拭くことにより清潔を保つことは出来る。
・プライバシーが保たれない状態の避難所での着替えは、トイレの個室で行ったり、見えないように脱ぎ着することで可能である。
・インターネットからのホルモン剤の個人輸入は、医薬品副作用被害救済制度の対象とならない上に品質や成分は保障されない。
「医薬品副作用被害救済制度」

≪Xジェンダー≫
・男女のどちらかの性自認を選択することが難しいために外見も中性的な人が多いが、公共の場においては本人が選択したジェンダーで振舞うために問題は発生しない。
・トイレや入浴については、性別移行中のトランスジェンダーと同じ対応で不自由さを解消できる。

≪インターセックス/性分化疾患≫
・性分化疾患は、生物学的な性別に関わる身体的特徴が曖昧になる100以上の疾患の総称である。
・ほとんどの当事者は、生物学的な性別ではなく、出生時に登録された戸籍上の性別で生活しているために、公共の場においては性別に関わる困難は発生しない。
・身体や外見の性別が曖昧な人については、トイレ、入浴、着替え等の問題が性別移行中のトランスジェンダーと同様に発生することがある。
・ホルモン剤の継続服用は、トランスジェンダーと同様の問題がある。その他の各人が抱える疾患については、一般の疾患を抱える人と同様であり、医薬品入手や治療継続の問題が発生する。
「PESFIS 性分化疾患( Disorders of Sex Development)」のセルフヘルプグループ
小児慢性特定疾患『内分泌疾患の性腺又は思春期発現機構の変異』疾患リストより
「グループ名・疾患数」
下垂体・視床下部グループ  35
内分泌疾患グループ    19
甲状腺疾患グループ    25    
副腎疾患グループ    17
性腺疾患グループ    23        

【避難所に提案したい改善点】
・衣類は、男女別ではなく、サイズ別に分類して提供する。
・高齢者、車椅子利用者、子ども連れの人、オストメイトなどの人の利便性を高めるために、仮設の「誰でもトイレ」を設置する。
・複数の人との入浴が困難な人のために、お湯の出る仮設の無料コインシャワーを設置する。

【その他】
・避難所は、高齢者・障害者・乳児・子供・女性・外国人・ペットの求める要望が達成されにくい環境である。
・長期に渡る強いストレスにより、精神症状、神経症状、身体症状が発生する危険性が高い。
・男女、成人・子供を問わず、身体的、心理的、性的、経済的、社会的などの様々な暴力に曝される恐れがある。
・災害ストレスによる自責感、罪悪感、絶望感により、うつ病や自殺の危険性が高まるため、継続的な心理的
ケアと安心と安全が保たれるコミュニティ形成が必要。
 

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